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2015.05.26.Tue | -
ヘイデースの花嫁(仮題): 本編その13〜14 by tem-monさん
 来たぞお、仮面くん。
 来たぞお、アクション満載シーン。


 やあ、tem-monさんに入っていただけてよかったなあ。



 

JUGEMテーマ:自作小説

 

 tem-mon のコメント 2009-01-14 22:34:38 :
《本編・その13:In the innocent labyrinth(その無邪気なる迷宮で)3》


 カチャリ。
 男が独り、廊下を歩いていた。
長い羊毛の絨毯が足音を消している。ただ一つ、男の不規則な歩き方で揺れる、首筋のアクセサリーが音を出すのみ。
 男は仮面をつけていた。仮面の中身はまるで見えない。顔全体を覆うプリズムのような反射を持つ薄い白色の珪素の仮面。その裏側にも、透明なクリスタルの細かい結晶がびっしりと配列されているようだ。だが、見えるのはそこまでだ。その先の顔は、無表情。薄く開いた瞳の隙間から覗く目は、何の感情も映していない。
 ここは衛星随一の五つ星ロイヤルホテル、【ホテル・ド・エクシア】。そのスイートルームエリアだった。今夜からVIPの招待客を交えて、来客総出で数日後のセレモニーのための歓迎会が催される……はずだった。
 男は招待客と同じスーツを着ていた。男も招待された者のうちの一人なのだろうか。
 男は何も喋らない。背筋はピンと伸びている。それは鍛えたものの姿勢のはずだ。だが、動き方だけがぎこちない。視線はどこも見ていない。
 不意に、どこかで音が聞こえ、瞬時に消えた。男の首だけがそちらを見ていた。仮面の穴だけが音の方向を探っていた。
 どこもかしこもチグハグのまま、映さない瞳で辺りを見回した後、男は不意に姿を消した。消えていた。瞬時に姿が無くなっていた。一歩を踏み出した姿勢で固まったまま、既に男はどこにもいない。
 穿たれるはずだった男の足跡の想像図は、永遠にそこに像を結ばないままだった。
 男が煙のように姿を消したその廊下は、まるで初めからそうだったと言わんばかりに無機質な死を迎えていき、音の無い静まり返った時空へと還っていった。


「こっちだ! みな音を立てないように、静かに行動してくれ。安全は必ず保障する!」
 デュランだった。彼は支配人からの依頼を遂行するため、VIPの男性たちをナハトとともに避難路に向けて誘導していた。
「焦らないでください! 大丈夫、こちらに進めば安全です!」
 ナハトも声を張り上げる。その胸には大きな丸の中に「鳳」の文字を刻んだ特殊偏光シール。依頼時に支給された支配人直属のスタッフバッジが、二人の胸に張り付いていた。
(ちゃんと誘導に従ってくれてるね。あの鳳さん、どうやらよほど人望や信頼があるみたいだ。なんにしても、パニックを起こさないでくれるだけでも本当にありがたいけどさ)
 こういう場所のVIPとは、すぐに我儘を言ってぐずる人たちの集まりだと思っていた。ナハトの偏見だ。だが、違っていた。他の場所は知らないが、ここに集まっている人たちは、もしかしたら何度もこういう修羅場をくぐってきている人たちなのかもしれない。ふと、ナハトはそんなことを考えていた。
 ただの成金とは違う。
 風格のようなものをそれぞれが纏わせていた。
 このフロアには総勢14名。
 招待客の中でも、もしかしたら最上位な客なのかもしれない。
 そんな重要なお客を部外者である自分達に任せてしまって、本当にいいのだろうか?
 上からの無事開催のお達しとか言っておいて、あの糸目の支配人の真意が分からなかった。
「ナハト! もうすぐギミックが始動する。指定場所まで急ぐぞ!」
 デュランが廊下の向こうから声を掛けてきていた。招待客の人たちも、全員指定場所の廊下の方に曲がっていた。ハッとした。そうだ、考える事は後でもできる。今は、引き受けた以上依頼されたことの方が優先だ。
「うん、今行く! 急ごう!」
 ナハトが駆け出した。と、その背後に人影が躍り出ていた。
「ナハト!」
 デュランの掛け声に咄嗟に上半身をひねって転がる。二回転斜めに前方に転がって背後を向いて起き上がった。
「お出でなすったみたいだね」
 先ほどまでナハトのいた場所、その絨毯の上に足跡を乗せて、空中から突如出現した仮面のスーツの男が立ち上がっていた。

 仮面男が辺りを見回す。と、客の最後の一人が廊下を曲がり消えるのを視認する。
「っと、そうはさせないよ」
 男がそちらに動き出そうとした矢先、機先を制してナハトが塞ぐ。
 男がかすかに首をかしげる。そう、男にはテレポートの能力がある。道を塞いでも無意味なはずだが……
「今だよ、ディー!!」
「応!」
 ナハトの掛け声に廊下の先のデュランが応え、壁の中のボタンを押した。
 いきなり天井から扉が落ちる!
 うなりを上げて何もない天井から防火シャッターが連続で男を襲う。仮面男は後方にブリッジを極めるように反って飛び、腕と足で何度も廊下を蹴り上げる。
 その先では壁が分離し侵入者を押し包もうと待ち構え、背中から飛び込んだ男を囲んでゆく。連続ジャンプ! 男は反射的な超短距離のジャンプを連続でくり返し囲みの外に出現する!
 そこへ電磁投網! 天井に開いた穴から広がった網が投げられて、空中で光を発しショックレベルの電気を流す。全ての壁の中のセンサーが全力稼動し、侵入者に向けて自動ですべての罠を展開する。人間はスイッチをタイミング良く入れるだけで良かった。だが、そのタイミングが命だった。ある程度罠のある位置にまで油断させて進ませないと駄目だからだ。早すぎても遅すぎてもいけない。
 つまりはこれは、単純ではあるが、達人級のタイミングを計れる人間でないとできない操作だ。支配人が人選に慎重になるはずだ。
 と、ナハトとデュランが背を向けて駆け出した。全力で後退する。
「どうした、追いかけてこないのか? お前のお目当てはもしかしてコイツだったんじゃなかったのか?」
 追いかける必要を感じずに逆の方を向きかけていた仮面男に、でデュランが挑発するように手の中の欠片を見せる。それはクリスタルの結晶だった。理由も聞かされず、打ち合わせ時に支配人に渡されたものだった。とても値打ちのあるものには見えない。曇りガラスのような色をした、どこにでもあるただの原石結晶だった。だが、途端に男の表情が変わった。見えないが変わった気がした。
 男は二人を全力で追いかけ始めた。テレポート! 目の前に出現した男を避けて二人はジグザグに廊下を曲がる。仮面男が追いかける。
 と、男の眼前で廊下の形がまた変わった。ブロック崩しのように変化する壁を避けると床が今度はスロープになる。斜めに変わる。絨毯が固く変質し、そこへ粘着物質が放たれた!
 床一面にぶち撒かれた粘着物を避けるように空中で連続してテレポートして移動する。と、天井と壁の格子模様が剥がれてラケットのように振り回された。はたかれて落下する仮面男! 粘着物質直前で無理やり瞬間移動して難を逃れる。無事な床に無様に転がる。廊下の景色は先ほどまでと同じだった。だが、男は一階層分下のフロアに移動したことに気付いていた。
 視線を上げる。人影がその視線の先に待ち受けていた。少し奥にいる片方の大男がまたも壁を操作した。
 バチィイイッ!!
 火花が飛んで男を包んだ。

 

 tem-monのコメント 2009-01-14 22:35:16 : 
《本編・その14:In the innocent labyrinth(その無邪気なる迷宮で)4》


「ねえ、ケン、あの仮面の人……何者なんだと思う?」
 こちらに任された棟には、人はあまり居なかった。少ない招待客をあらかた誘導し終えた後、次の場所に進みながら、イズミはケンに向かって質問していた。
「え、何いってんのイズミ。悪者に決まってるじゃん悪者……イテテテテ!痛いってイズミ何すんの!」
 途端に怒りの表情でケンのこめかみをグーで挟むイズミ。
「そ〜いうことを言ってるんじゃないわよもー、ケンったらもう!」
「え〜? だったらどういうことなのさあ……」
 そしてイズミは力を抜いてヘッドロックからケンを解放した。
「イズミ?」
 元気の無くなったイズミにケンは心配そうに声を掛けた。
「……わからないの。わからないのよ……だけど、一瞬だけ聞こえたあの人の声、普通とだいぶ違っていたけど、でも! だって、悪い人には思えなかったんだもん……」
 イズミはあの時、刹那だけふれ合った精紳波を思い出していた。
 その心は他の人のような雑音は殆ど無く、澄んだ鈴のような音に満たされていた。かすかに感じた雰囲気は【寂しさ】。そして、怒りと決意。
 それは、とても悪人が出せる清浄さではない。そして、空虚な圧倒的な寂しさのレベルも、普通に生活している普通の人間が出せるものではあり得なかった。
 その精神は怖いくらいに、静かな音に満たされていた。


 男の周囲に火花が浮いて奔っていた。
 仮面男が腕で顔を覆って静かに見渡す。男の周囲だけではなかった。廊下という廊下、窓という窓、扉という扉の周囲が電子的な火花で包まれていた。壁も天井も全ての底辺を覆っている。プロレスの金網電流デスマッチ、あれに近い光景だ。
「驚いたかい? 【鳥籠】っていう名称らしいよ」
 ナハトが口を開いた。
「オレも初めて聞いたときは耳を疑ったけどね。客のいるホテルの中で火花の散るギミックを作動させるなんてさ」
 ため息。その他の仕掛けも大袈裟にも程がある。ケンのお父さんって人は、一体全体どういうシチュエーションを想定してこんなものを考えたんだか。
「心配しないでも、このホテルは完全不燃体で作ってあるらしいから燃える心配はないらしいよ。ここの外はすぐ宇宙だし、当たり前だけどその点は厳重で慎重らしい。この羊毛絨毯なんかも、ぜんぶ実は合成繊維で、不燃処理されてるらしいしね」
「だが、これでこの階層フロア、籠の中は誰一人脱出できないまさに鳥かごになった。客たちはちゃんと影響の及ばない場所に誘導してある。残念だったな仮面男。このクリスタル以外にどういう目的があったかは知らないが、ここで観念してもらおう」
デュランもナハトの横に並んでいた。クリスタルを懐に仕舞う。大きな武器は使えない。が、二人とも素手でも相当の使い手だった。しかも、これも渡されていた拳を保護する特殊グローブと、伸縮ロッドを取り出して、カチャリと構える。
 男はデュランを睨んだあと、肩をすくめてあさっての方向を眺め、遠くを見る目で腰を屈める。
「テレポートだっけ? それは使わないほうがいいらしいよ」
 ぐりん。首だけが動きナハトと目が合う。……どういう動きだ。そして喋りながらナハトは違和感に気付く。数十分前にかけた整髪料の匂いがしない……なぜだ?
「テレポート、ってやつも、物理法則からは逃れられないんだってさ。この【鳥籠】はそういう力を持つ人にも有効みたい。目に見えないくらい小さなエネルギーの動きをかき乱しているから、無理やり通ろうとすると、どうなっても知らないって怖い糸目のお兄さんが言ってたよ」
 身体の方もナハトたちの方を向いた。クリスタルの事だけではない、二人を相手にしないと逃げられない。そう悟ったらしかった。
 そして二人の力量も。両手をだらんと下げ、顔だけを前に出し、男が不思議な構えを取る。
「ディー、ずっと力をセーブするの、大変だったんじゃないもしかして?」
 ナハトが茶化し、デュランが苦笑した。
「かも知れないな。だが、それなりに楽しくはあった。では、腹ごなしに廊下が壊れない程度に暴れさせてもらうとしよう。愛用の武器がないのが残念だがな」
 ゴウッ
 二人の闘気が膨れ上がり充満した。筋肉がパワーとそれに伴う何かを込められ膨張する。小さく長く、細い呼吸音の息吹が漏れる。そして
「いくぞ……!」
仮面男に向けて巨漢の大男が走り出した。

 

☆☆☆☆☆☆☆

……また一万字超えてしまった(汗)
次回は、支配人とその執事兼ボディガードの双子の中国拳法美人姉妹出ます。
乞うご期待。

 

 <karicoboのコメント 2009-01-15 12:09:39 :> 
おおお、盛り上がって参りましたね! もう、完全に読者の気分。美人姉妹の拳法も楽しみだわ♪
ジンの鳥篭開発の裏には、エクルーやスオミなど、イドラの能力者の協力があったと思われ。
(『ジン! ちょっと! 協力ったって、単なる実験台じゃないかあーーー!!』『ちっ、また逃げられたか。じゃあ、エエルギー波動を+3、格子間隔を……』『ちっ? ちって言った? ジン! もしかして、これ、俺をいじめてるだけじゃないのかああー? (ちゅばばばばばっ) のわああああああっ』)

 <tem-mon のコメントを削除する 2009-01-15 22:00:02 : >
わあい♪ エクルーの、悲・鳴(変態か!?)
ジン、遊んでるなあ(苦笑)
相変わらずな関係でオッケーです(オッケーなんだ?)
本編……という一言は自分にも跳ね返るので大変危険なので控えます(言ってるだろ)

2009.07.28.Tue 00:04 | リレー小説
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2015.05.26.Tue | -

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